愛と認識との出発 自然児として生きよ ――Ｙ君にあたう――

その態度が土台から憎悪と軽蔑とを感じさせるようなものであるならば、頭から態度に出でてもいいかもしれない。私にそれができるならば、それほど存在に無関心でいられたならば、安易な心を持して行けるかしれないのである。

心あるものは平気で総代なんかになれるものではない。
伝道とは自己の思想の普遍と永遠とを要求する心をいうのである。
あなたの持ってる善人の範疇（はんちゅう）からは私などはただちにはみ出されそうである。彼らは心をもってしない。純な心で物象を感得することは容易なことではない。
将来社会に出て戦うべき生活の自信を得たのは何より感謝するところである。
事情を見なければ解るものではない。その思想とその持主の内生活との間に存する特殊の事情を顧みる暇を持ってるであろうか。
絶叫する校に出現せねばならないと思う。
校友ではない。
あなたにいいたきことはあなたの生活はまだ素朴的センチメンタリズムの範囲を出ていないことはあるまいか。

原典: 『愛と認識との出発』倉田百三