忍者ブログ
青空文庫を400字程度に要約
[25] [24] [23] [22] [21] [20] [19] [18] [17] [16] [15]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

この世とは、あきらめの努めか。日に虫食われゆき、仕合せも、陋巷(ろうこう)の内に、見つけし、となむ。
力を得て、これを完成させぬうちは、東京へ帰るまい、と御坂(みさか)の木枯(こがらし)つよい日に、勝手にひとりで約束した。
変なせきが出なくなった。

下宿と小路ひとつ距(へだ)て製糸工場が在るのだ。女工さんたちが、作業しながら、唄うのだ。
あの女工さん、おどろき、おそれて声を失ったら、困る。
姉さん知ってるかい? 知らねえだろう。内緒で、夜学へかよっているんだ。
季節はずれのそのレンコオトを着て、弟は寒そうに、工場の塀に脊中(せなか)をくっつけて立っていて、その塀の上の、工場の窓から、ひとりの女工さんが、上半身乗り出し、酔った弟を、見つめている。
月が出ていたけれど、その弟の顔も、女工さんの顔も、はっきりとは見えなかった。
あの夜の女工さんは、あのいい声のひとであるか、どうかは、知らない。
PR

コメント


コメントフォーム
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字


トラックバック
この記事にトラックバックする:


ホームページ制作 ソフトウェア開発 忍者ブログ [PR]
ブログ内検索
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31