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青空文庫を400字程度に要約
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 ……一つの小径(こみち)が生い茂った花と草とに掩(おお)われて殆ど消えそうになっていたが、それでもどうやら僅かにその跡らしいものだけを残して、曲りながらその空家へと人を導くのである。

まみれのカアテンにさえぎられて、その中の様子はよく見えなかった。そこなどはいろんな台所道具が雑然と散らかっていて、中には倒れたまんまのもあり、そしてそれらのものは一面にこぼれた壁土のようなもので埋もれていた。
「君、メリメエという人の小説を読んだことがある?」「いいえ、ないわ」「そうかい、僕はその人の小説がとても好きなんだがなあ……僕はその人の短篇でね、『マダム・ルクレエス街』というのを読んだことがあるんだ……その中にね、丁度、今みたいな家が出てくるんだぜ、それは伊太利(イタリイ)の話だけれど……ところがその空家の二階の長椅子がね、一つだけ埃がちっとも溜(た)まっていなくて、何だか始終人に使われている見たいだったんだ……実はそこでね、毎晩あるお姫様がその恋人とあいびきをしていたということが後でわかるんだよ。そう云えば、今のあそこの二階もね、僕は何だかそんな秘密でもありそうな気がしてならなかったよ……やはりさっき上って見ればよかったなあ……」「まあ……」少女はそんな突拍子もない少年の話を聴きながら顔を真っ赤にしていた。

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