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青空文庫を400字程度に要約
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どれ位経ったか、赤ン坊の泣声に気がつくと、私は板敷につっ伏(ぷ)していた。三畳に寝て赤ン坊を覗き込んだ。
赤ン坊は赤ン坊の世話だもの。氷代、炭代、赤ン坊の牛乳代など、倹約にしていれば二月位あるだろうと夫と話して貯えは、終った。
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婦人であったが、その夫が婦人から、その婦人が自動車に乗るのを助ける目的で、子供と思われる赤ン坊を受取ったままはぐれて終って、その赤ン坊を宅へ連れ帰り、事情からそのまま預り育てていると云うので、夫が大患に罹った為め、妻たるその婦人が事務所を訪ねて、秘密裡に母親を尋ね出す事を依頼したのである。
夫も心配だけれども、赤ン坊にも伝染(うつ)りはしないかと随分心配だわ。
赤ン坊は他所の子ですもの。夫が思いもかけぬ大病になって、その中で赤ン坊を馴れぬ手に育てる。こんな貧しい中で、明日にもなくなるお金の事を思うと、ほんとうに情けなくなる。夫がこのまま治って呉れれば、赤ン坊が育ってさえ呉れれば、今までの苦労は何でもない事だわ。お母さんはどうしていなさるんでしょう。夫が赤ちゃんを連れて帰った時に、私は驚いたけれども、夫の話に真実偽りがあろうとは思いません。
あまり混雑するので、乗ろうか乗るまいかと決し兼ねている中に、又一台自動車がやって来た。
そうしてデッキに片足をかけて、奥さんに、「赤ちゃんを抱っこしましょう」 と奥さんの返辞を聞かないうちに、赤ン坊を受取って、中へ飛び込んだ。
映画館を出てからは、尊大に、むっと不気嫌になって、一言も口をきかない。
名乗り出たのは末弟である。
調子が出て来た、と内心ほくほくしている。
んだがなあ、と思っても、いまさら、それを取りに行って来るわけにもゆくまい。


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